古文書 2  猿橋掛替関係古文書

 猿橋は、刎木と呼ばれる木材を両岸の岸壁に差し込む方式の橋なので、腐食しやすく、約20年毎に架け替えを必要とする橋だった。
 この架け替えに必要な材木は村内だけでは調達できず、近在の村々から購入していたようだ。

2A 架け替えについて歎願書
  (書下し文
乍恐以書付奉申上候

御支配所猿橋村役人共申上候、当時往還
橋の儀、両側刎五刎の橋にて、刎木土中埋候
儀に付、多分年数難相保、先年より弐拾ヶ年目
御掛替御普請被仰付来候処、去る申年
御掛替御普請被仰付、其後巳年、板替・高欄
通御修復被仰付、当卯弐拾年におよび申候

尤目通の内、破損又は痛候場所も不相見候得共
刎木土中の儀、難計、且又申年御掛替之砌、
行桁古木御取用等も有之候得ば、御年限に付、
御見分之上、当卯年中御目論見被成下、来辰
春、御掛替御普請被成下度、奉願上候、依之
以書付奉申上候、以上
                      猿橋村
  文政二卯年二月  名主  六郎兵衛 印
           組頭  孫兵衛  印
           百姓代 与右衛門 印

   谷村御役所

 
(大意)

 恐れながら書付をもって申し上げ奉り候。

 (谷村御役所の)支配下の猿橋村役人共、申し上げ候。
 (甲州街道)往還にある猿橋は、5層の刎木を土中に埋めているため、長い期間は持たないので、以前より20年毎に架け替えをして来た。

 前のサル年(寛政12年、1800年)に架け替えを行い、その以後、板替え、高欄修復などをして来たが、今年(文政2年卯年)20年になる。

 見廻した所、破損や痛んでいる所は見られないが、刎木は土中にあり、痛んでいるかどうかわからない。
 更に、前回架け替えの時、行桁には古い材木を使っており、もう年限になるので、実地見分をして、今年中にその結論をいただき、来年春には架け替えをを致したく、願い上げ奉り候。

  谷村役所 殿

   文政2年2月   猿橋村 役人 名主、組頭、百姓代 連名 捺印


2B 林村から材木調達

一、杉一本 この代金 一両2分  
  
 猿橋宿内「大猿橋」の掛替普請につき、林村の村民が
氏神に集まり相談した結果、
 杉を2本の
うち、神社前の一本は、御用材として伐り出す事は如何という事で
 (伐り出すことを猿橋村に)断ったところ、猿橋村は他の
村で一本を調達することになった。
 一
本については申分ないので、代金一両一分で売り渡すことに間違いない。
 
この上は、林村の方から異論を申す事はない。証拠として證文を差し出す。

   嘉永三年戌十一月       林村  役人連名、捺印
          
猿橋宿御普請御掛  役人 宛

  *猿橋と宿場町「猿橋」を区別するために「大猿橋」と呼んでいる。
             

一、 杉壱本
     
    此代金 壱両弐分

右は御宿内大猿橋掛替普請に付、村内
 氏神社地にて一統相談之上、杉木弐本
 売渡申候処、宮前壱本之儀は、御用材に
 
伐出候儀如何心得候哉、村方一統御免申入候処、
 外村にて壱本御繰合に相成、右対談の内、
 壱本之儀は申分無之に付、今般御用
 村に代金壱両弐分にて売渡申候処実正に
 御座候、然る上は村方において一統申分等
 決て無御座候、依て為取替證文差出申処
                 
如件
   嘉永三年戌十一月  林村
                 与頭 伝兵衛 印
                 名主 兵五郎 印
          
猿橋宿御普請御掛
                 年寄 久右衛門 殿
                 外 御世話人中  

2C 浅川村の材木売り渡し

    乍恐以連印書付奉願上候


一 今般猿橋と申橋掛替に付、

  御公儀様御普請所に御座候処、請本猿橋

  宿中問屋久兵衛と申者、当三月下旬、浅河

  村え参、瀧本院并名主甚右衛門、組頭清兵衛

  方え参、不動尊境内にて刎木六本、行桁弐本、

  都合八本買請度申来り候、依之村中

  惣氏子一同評儀仕候処、折節不動尊ならびに

  前宮明王大権現両所共に及破損に候処、

  近年引続百姓困窮に付、如何修復

  可致と存居候時節に候得ば、幸ひと存、殊に
   (以下略)
    恐れ乍ら連印書付をもって願い上げ奉り候

一 今般、猿橋と申す橋の掛替に付き、御公儀の普請となり、請け元、猿橋宿の問屋久兵衛と
  申ものが、三月下旬、浅川村へ参り、瀧本院と名主甚右衛門、組頭清兵衛方へ行き、
  不動尊境内の刎木用の材木6本、行桁用2本、合計8本を買いたいと申し入れた。
  浅川村の氏子一同が評儀したところ、ちょうど不動尊と前宮明王大権現ともに破損しており  (この修復費が必要であるが)、最近、村の百姓は不作で困窮しており、どうやって修復す
  るかと考えていたところであり、(今回の材木売り渡しは)幸い・・・・(以下略)
      
2D 掛替普請の記録
建設省関東地方建設局が平成5年に刊行した「甲州街道 歴史資料集」には左の古文書が紹介されているが、内容は未確認