滝沢馬琴兄の甲州道中記 仮ページ

出発 石原から

猿橋〜花咲




鳥沢から駒橋までの解読文 本番では現代語訳をつける必要がある。
御とまり
鳥沢
野田尻より二里七丁、扨此ところへ
私一番に着き申候時は、六つ半
過ぎにて、御さし宿へ着き候
とすぐに湯に入、上がり候へば
直に飯をたべ申候
飯 ずいぶん白く■し
汁 なす、みそあしく食べにくく
候へども、二杯たべ申候
膾 何か知れず少したべ申候
ひら 焼き豆腐、なす
鮎のやいたのにて■し
何杯はいけず候へ共
先このくらいならば、おとに
聞きし鳥沢のわるいと
申ほどにも無御座候
からの物はなし
右の通にて飯五杯食べ
暫く休み、ふとんきして
とろ??寝入り候へば、田口着き
候て、むしょうに騒ぎ候まま
目覚め、それより田口とかれこれ
話し候うちに
御上にも御着きのよし、宿にて
知らせ候ごとく、今日御先ばん
故、御本陣へ参り申候
一 それより
お上にも御本陣へ四つ半時分
御着きにて甲府への御状仕立
飛脚差出申候
右の御書ものしまい候て、九つ過ぎ
下宿へ帰り候へば、皆々
くたびれ候よし、すぐに臥せり申候、
扨々この夜は大きにくたびれ
たわいなく臥せり申候
七つ時分に起き、皆々くたびれ
にて、良く寝られ候まま、起し
申候、私はふと七つ時分に目
覚め候まま、一番に起き、人々を
起し申候、それより皆々
手水など使い、支度
致し、飯食べ申候
飯 はよく■
ひら 八はい豆腐、このところ
の豆腐は石のようにて
臭く食べられ不申
これも食べられ不申候
中さらに
奈良漬の香の物
薄く切り、二切れ
ごまめをわざとつけ候
よふにつけ申候、皆々
大笑ひ致し申候
扨、右の通にて、誰も一向
飯食べ不申、よう??その香の物
と弁当箱の甘露梅
にて茶だけに致し、二杯
食べ申候
一 天気よくなりしまま、いさい
晴々と至極宜しく
御座候、しかしくたびれ直り
不申、足だるく候へども
馬に乗り候まま、随分
構いなく、六つに立申候、今日は
御供番故、御後より
立申候
廿一日
一 これよりの道筋、少しづつ
びくの坂御座候へども、昨日
の半分にも御座なく、道
幅は狭く御座候、左りに
流るる川を桂川と
申候よし、扨々よき景色
にて、川のまわり皆々色々の
石にて、余程河原も御座候、
又川の中にすさまじき
岩石御座候ところ、二度ころ
み所御座候、川はよほど
深く御座候よし、この川中に
御座候岩へあたり候水
まっ黒に逆巻き流れ
落ち候景色、誠に??
岩打つ波のおのれのみと
詠み給へる■も眼前にて
面白きもあはれも、この
うちに申ぞと、暫く
感じ候事に御座候、又これ
程早き水勢の川に、所々
鮎とり候、網のよふに籠にて
こしらへ候もの有之、■きにて
番小屋など御座候、この川の
鮎は至って大きく御座候
よし、又々跡先には
色々の人々もまじり
参り候事なれば、この川も
名を聞きて、昔、お半が
帯を締め直せし岩なり、
この川を渡る時は、長右衛門も
川越しはけちな事だと云った
など、さま??のむだ口におはん・
長右衛門の浄瑠璃一節
づつ出申候も、よき旅のたわ
むれに御座候らいき
一 段々この道筋参り
候うち、一二ヶ所も馬より
おり候程の坂有之、程なく
猿橋と申宿へ参り申候
猿橋 鳥沢より廿六丁半、此所馬つぎ
此宿の入口にさるはしと申
橋御座候、まことに甲州一の名所
のよし、長さ十六間、はしくい
なし、両方のいわよりだん??
くみにいたし、はねばしのよふ
にて、上までくみたて持出し
水きわまで三十三ひろありと
M
申候、水せいはいたつてはやく
はしより下を見候へば、まことに
すさまじきけしきにて御座候
此みち、だん??参り候うちも
少しつゝの高びくにて、さしての
坂も無之、みちはばはせまく
左りの山につきて参り候間、
ひだりの 山は、ろく??しれず
候へども、右の方は見はらしよく
山は山につづきて、てん氣よく候まゝ
よく見へ、谷川のながれ清く
水音はどん??いたし、山かげ
なdぢに小家又は寺などある所
もあり、扨々其けしき、まことに
ゑにかくともおよばぬ■にて
?
御座候、はるかむかふの山に、むかし
武田の臣小山田備中守の城あと
のよしにて、よき山御座候、其山の
上に城御座候らひしよし、もちろん
山の上に候へども、水のじゆうも
たり候、まことに名城のよしに
御座候、今は木かやもわずかにて
ただ松柏のふるびたるさま、まことに
古せきと、はるかにながめ申候、
又も先の山にかぶと山と申よし
にて、芝山のかた??岩にて
はげたか所うしろむきのかぶと
のごとく成候が、しころのあたり
まで、よくもかぶとにに候山御座候
駒橋 さるはしより廿二丁